取引基本契約書の審査 【原則編】(その3)

取引基本契約書

以下、個別条項のチェックポイントを挙げていきます。

契約解除条項が「対等」な内容になっているか?

相手方のみが解除できるとする条項であれば、対等な内容への変更を要請することを検討します。

期限の利益喪失条項が入っているか?

契約解除条項は対等な内容になっているにもかかわらず、期限の利益喪失条項だけは相手方のみに認められているという書式を見たことがあります。

その相手方(超一流の電子系企業)は、一時期与信不安説が流れたことがあり、取引基本契約書を確認した際に、当然入っているであろう期限の利益の喪失条項が相手方にのみ認められていたことがわかり、非常に焦りました。

しかも、当該期限の利益の喪失条項は、契約解除条項の文脈ではなく、全く別の条項にひっそりと置かれていたため、当時の契約審査担当者は見落としてしまったのだと思われます。

契約書の起案において、相手方は本当にいろんな手を尽くしてきますので、見落としがないよう注意する必要があります。

相殺条項が入っているか?

相殺条項は与信対応のための条項ですので、期限の利益の喪失と同様に重要です。

こちらも、対等になっていない場合がありますので、万一入っていなければ追加要請の検討をします。

秘密保持条項が「対等」な内容になっているか?

取引基本契約書の秘密保持条項は、軽視されがちですが、見積金額の競合他社への漏洩の防止など、わざわざ秘密保持契約書を取り交わすまでもない営業情報の漏洩を防止するという意味で重要といえます。

自社のみが秘密保持義務を負うとする条項であれば、対等な内容に変更してもらえるよう交渉することをオススメします。

瑕疵担保責任を負う期間が長すぎないか?

取引基本契約書の瑕疵担保期間については、個別の契約書(見積書や仕様書や受発注書)で保証期間を定める慣習がしっかりできているようなら、あまりに不合理な期間が設定されていない限り、基本は放置してよいと考えています。

ただ、原材料のビジネス等で、すでに取引が自動化されているため、改めて見積書や仕様書を取り交わすチャンスがないといった場合もあります。

その場合、その取引における瑕疵担保期間がいったいどのくらいなのか、営業担当者すら把握できていないようなケースもあります。

そうなると、取引基本契約書の瑕疵担保期間が有効という解釈になってきますので、たとえば、通常販売している製品の瑕疵担保期間を納入後3ヶ月程度と設定している場合において、取引基本契約書の瑕疵担保期間が3年となっているなどの場合は、もう少し合理的な期間に変更できないか交渉しておくことも、リスクヘッジという観点からは重要かと思われます。

とはいえ、この例の場合でも、納入後すぐに当該原材料を使用してしまい、瑕疵の有無は3ヶ月も待たずに明らかになるといった実態があるようでしたら、その不合理な契約期間についても放置しておくという判断もありえます。

複数の取引製品がある場合は、そうした解釈も難しいと思われますが、以上のように瑕疵担保期間の交渉要否についてはケースバイケースで判断できるところであると考えます。

価格決定方法に不合理なルールが定められていないか?

まれに「相手方がエンドユーザーと設定した価格設定により、自社と相手方間の価格設定も影響を受ける」という内容の条項が含まれていることがあります。

自動的にスライドするといった定め方になっていない限り無視していい条項かとは思われますが、そうしたルールを取引基本契約書で定めてしまうと、その後の価格交渉に悪影響を及ぼす危険性があります。

できれば、価格については「甲乙協議して決定する」といった一般的な条項のみとしておきたいところです。

ここまで、取引基本契約書の審査の原則について見てきました。

次は実践編に入ります。

ここまで挙げた原則をひっくり返すようなことを書きますが、驚かないでくださいね。

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