取引基本契約書の審査 【原則編】(その1)

取引基本契約書

取引基本契約書とはどのようなものを言うのでしょうか?

この点については、「類型別 契約審査手続マニュアル」と「取引基本契約書の作成と審査の実務」の双方に書かれています。

「類型別 契約審査手続マニュアル」では、

「(法律的には定義はありませんが、)一般に、大量反復的取引を継続的に行う場合に、個々の取引の都度、契約書を作成するという非効率を回避するため、事前に、当事者間で、個々の取引に共通に適用される基本となる事項を定めた契約」をいう。

「類型別 契約審査手続マニュアル」

と説明されています。

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また、「取引基本契約書の作成と審査の実務」では、

「企業間で反復継続して行われる商取引、とりわけ動産取引について共通的に適用される事項をまとめてあらかじめ定めたものである。」

「取引基本契約書の作成と審査の実務」

と説明されています。

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これらの定義はそのとおりだと思います。

反復継続して行う取引の共通部分をあらかじめ定めておくことには、事務の省力化にもつながり、大きな意義があります。

ただ、実務において、取引基本契約書を締結する目的は、もっと別のところにあります。

実務において、取引基本契約書を締結する最大の目的は、

「与信不安先に対して直ちに債権全額について繰上請求ができるようにするため」

です。

取引基本契約書には、取引の相手方に与信不安が発生した場合には、繰上請求ができるとする「期限の利益喪失条項」が規定されています。

この規定がないと、仮に自社の取引先に与信不安が発生した場合でも、例えば支払いサイトがまだ60日もあるという状況であれば、他社が取立に走っている動きをただ指を加えて見ているしかなくなってしまうという危険性があります。

取引基本契約書を締結するメリットはほとんどこの一点にすぎないとまで言っている弁護士もいます。

取引先の与信不安に対応できるようになるという点で、取引基本契約書を締結することには大きな意味があると考えておくべきです。

以上の目的を鑑みれば、客先から提示を受けた取引基本契約書の契約審査でまず優先的に見るべき事項は

  • 期限の利益喪失条項が入っていること
  • 契約解除の条項が「対等」な内容になっていること
  • 相殺条項が入っていること


ということになります。

もちろん、それ以外の条項でも、細かい契約審査が必要になりますが、客先から提示を受けた取引基本契約書の審査においては「取引先の与信不安に対応できるか?」という大きな視点が必要’になることをおさえておく必要があります。

以上が、客先から提示された取引基本契約書を審査する際の基本事項です。

では、もう少し詳しく、取引基本契約書の審査の原則をみていきましょう。

その2に続きます。

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