殿堂入りの絶品本
この本を読み進めて感じたことは
「よくここまでの情報を公開したな・・・」
というものです。
この本は「殿堂入りの絶品本」であり、メーカーや商社の法務担当者は一人一冊持っておくべき本だといえます。
滝川先生の「取引基本契約書の作成と審査の実務」も一人一冊本に挙げられてきた本ですが、これと同等の価値のある実務本といえます。
この本の何がいいのか?
1.豊富なQ&Aとバランスのよい回答
数えてみると、207件のQ&Aが掲載されており、どれも実務で本当によく問題になるものばかりでした。設定される事例も具体的で、イメージがしやすくなっています。
また、回答内容も、売主と買主の双方にとって合理的な内容となるような、Win-Winを意識したものになっており、納得性の高いものになっている点が気に入りました。
同事務所で過去にあった相談の事例を書きためてきたものを公開してくれたものなのかもしれません。
法務部の相談事例データベースをそのまま公開してくれたという感じです。
他にも同様のQ&A本は出版されていますが、ここまでのものは見たことはありませんし、今後もこれを超える本はしばらく出てこないかもしれません。
2.法令や判例の根拠の提示
改正民法により実務上どのような影響があるかについてもしっかり触れられています。
また、例えば「不安の抗弁権」が認められた裁判例についてもしっかり引用がされていたり(P180)、また近時の裁判例での解釈傾向(例えば「重過失」の解釈傾向についての解説(P245 ) )が示されていたりするなど、かなり多くの箇所にマーカーを引くことになりました。
法務の実務では「根拠を示す」ことが重要になりますが、その根拠をそのまま使える形に加工して示してくれていますので、業務の効率化にもつながる内容になっています。
3.定義の充実
実務上よく使われる言葉の「定義」を明確にしている点も特徴の一つです。
例えば、よく使われる「メーカー責任」という言葉についても、その位置づけを(「経済合理性」という言葉をキーワードに)はっきりさせたうえでわかりやすく説明してくれています(P245 ~)。
こちらも実務でそのまま使える内容で、本当に助かります。
この本の使い方
まずは、各事例を読んで、自分だったらどう回答するか?について考えてみます。
そのうえで、A欄にある回答を読みます。
その回答が自分の考えた回答と一致していれば、それ以下の解説は流し読みでOKです。
一方、一部でもズレがあったり、発見があったりした場合は、その部分を重点的に読み込み、ポイントとなる部分にマーカーを入れます。
マーカーを入れた部分は全てレバレッジメモとしてWordファイルにまとめておきます。
(レバレッジメモについては、本田直之氏の本をご参照ください)
まとめ
この本を読んだか否かで相当差がついてしまう、というレベルの内容です。
メーカー取引を前提にした内容ですが、商社取引にも役立つ内容が含まれていますので、商社の法務担当者にもぜひおすすめしたいと思います。
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