理論だけでなく「実務」が知りたい法務パーソンにおススメ
今担当している訴訟案件もいよいよ大詰めの段階(「証人尋問」段階)に突入しました。
訴状が届いた段階ではここまで長引くとは思わなかったのですが、和解も成立せず判決を待つというクロージングになりそうです。
法務パーソンにとって「訴訟実務」は実はそう身近なものではありません。
定年するまで一度も訴訟を経験しないで終わる法務パーソンの方がむしろ多いと思います。
これは予防法務という観点から考えれば、訴訟に至らないような契約書の起案や相手方との交渉ができているということなので、適切な対応ができていることの証左でもあるのですが、一方で法務を担当する以上、民事訴訟の実務を経験してみたいと思う方も多いかもしれません。
私自身も民事訴訟の実務を判決まで経験したことはこれまでなかったため、今回の訴訟案件は(現場で担当する営業には申し上げにくいことではあるものの)法務としての経験を高めるうえで一つのチャンスと捉えていました。
せっかくの機会なので、民事訴訟法の基本書を訴訟のプロセスに合わせて読んでいこうと考え、いくつかの本を入手しました。
最初に手に取ったのが、長谷部由起子先生の民事訴訟法(第3版)です。
司法試験の界隈では今主流となる基本書で、適度な厚さの中に必要な項目がもれなくまとめられている良書です。
試験対策という意味では今の段階ではこれがベストの選択肢になると思われます。
ただ、理論はさておき、民事訴訟の実務ではどうなのか?という問いに答える記載はそう多くはないという意味で、訴訟実務を担当する法務パーソン向けか?と言われると少々物足りないようにも思われました。
そこで別の基本書をジュンク堂で探していたところ見つけたのが瀬木比呂志先生の「民事訴訟法(日本評論社)」です。
瀬木先生は元裁判官というご経験から、常に「実務ではどうか?」という点を意識して説明を進められています。
(ほぼ全ての項目において「実務では・・・」というキーワードから始める実務情報を追記してくださっています)
例えば、P320から始まる「権利自白」について、その対象として次のような記載がありました。
実務で権利自白がなされるのは、ほとんどの場合所有権についてであり、私の経験では、それ以外の例はあまり思い出せない。(中略)実務でこのことが問題になるのは土地の場合であり(以下略)。
(民事訴訟法(瀬木比呂志)P321から引用)
権利自白は司法試験でも狙われた論点ですが、ここまではっきりと「権利自白は所有権だけだよ」と言い切ってくれたことで、その概念の理解が促進される感覚が得られました。
(ジュンク堂でこの部分を立ち読みして、即購入することを決めました・・・)
他の項目においても、とにかく実務ではどうかという点にこだわった記載が満載のこの本は、司法試験の受験生よりも、企業で民事訴訟の実務を担当する法務パーソンにぜひおススメしたいと思います。
分厚い本の読み込み方
この本は非常に分厚い本です。こうした本が苦手な方もいらっしゃるかと思います。
私も同様に苦手なのですが、下記のように背表紙をばらして、二穴バインダーに入れて読み込むようにしています。
こうすることで、通勤にもバックに入れて持ち運びがしやすくなり、心理的な抵抗感も和らげることができるので、おススメできます。
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