取引基本契約書の審査 【原則編】(その2)

取引基本契約書

取引基本契約書の審査における「基本方針」は次のとおりです。

形式面と実質面に分けて検討します。

<形式面>

取引基本契約書の変更を取引先に要請する場合には、変更内容を定めた「覚書」を作成し、取引基本契約書とともに締結してもらえるよう交渉するという方法が多いといえます。

これは、取引基本契約書は「冊子」になっていることが多く、取引基本契約書そのものをワードファイルを使って変更案を作成することが難しいためです。

冊子ではなく、ワードファイルで提示された場合には、覚書ではなく、ワードの機能である「変更履歴」を使って、変更箇所を朱記で示す方法を取ります。

この方法の方が取引先との契約交渉のスタンダードといえます(取引基本契約書の契約交渉に限りません)。

<実質面>

以下の3つの視点から検討します。

【その1】「対等」な内容になっているか否か

特に「解除」と「秘密保持」の条項は、対等な内容に変更を要請したいところです。

【その2】「事実上対応できない内容」が含まれていないか

これは、自社で対応できない内容が含まれていないか、という単純な視点ですが、極めて重要な視点であると考えています。

たとえば、商社が客先から提示された「4M変更の事前通知義務」の条項については、メーカーの協力なくして合意できないものですので、商社として対応できるレベルにまで義務レベルを落として取り交わすことができないか(具体的には努力義務にまでレベルを落として契約できないか)について客先と交渉をしておきたいところです。

ただ、対応できない内容であったとしても、自社と相手方との取引には関係がない条項である場合には、無理に変更を要請する必要はありません。

例えば、支給品に関する条項で自社では対応できない内容が含まれていたとしても、相手方から自社に対する支給品が存在しないような場合には、無視して構わないと考えます。

【その3】個別の受発注において別途取り決めが可能か

個別の受発注において実態に合った取り決めがなされていることが確認できるものについては、取引基本契約書において無理には変更交渉する必要はないと考えます。

たとえば、取引基本契約書の瑕疵担保期間が1年となっていて、その取引基本契約書が想定する製品の保証期間よりも長い場合であっても、個別の製品の見積書・仕様書やそれを受けた受発注書においてその製品の保証である3ヶ月がきちんと定められているということであれば、無理に取引基本契約書の中で変更交渉をする必要はありません。

その3に続きます。

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