原則編では、秘密保持契約書の基本的な形を示しました。
特に国内企業との秘密保持契約書はシンプルであればあるほどよいと考えていますが、営業的な事情により、もう少し条項を追加しておきたいというリクエストを頂くことがあります。
ここでは、そうしたリクエストに応じて準備することの多い条項をまとめていきたいと思います。
原則編に引き続き、ここでも「自社の製品を客先の商品に適用する可能性を検討する」という製品売り込みの場面を想定して検討していきます。
情報開示は任意であることの確認したい場合は?
営業からよくある相談として、
「秘密保持契約を取り交わしたからといって、情報を出す義務を負うわけではないですよね?」
というものがあります。
こうした相談を受け、
「秘密保持契約を取り交わした以上、客先がほしいといった情報については、基本的に出さなければならなくなるのか?」
という疑問を持っている方が結構いることがわかりました。
回答としては、そのような義務が生じることは一切ない、ということになりますが、営業的なパワーバランスの関係から、この点をどうしても確認しておきたいというリクエストを頂くことがあります。
その場合は、簡単に「本業務に必要な範囲で」とか「各々が必要と考えた範囲で」といった文言の追加を提案することもあります。
たとえば、次のような条項です。
絶対に必要となるものではありませんが、必要に応じて追記を検討してもいいかもしれません。
複写・複製を制限したい場合は?
開示を受けた秘密情報は、関係者の間で、一定程度複写・複製はされてしまいます。
その点は暗黙の了解として相互に覚悟のうえで進めることになりますが、あまり無制限にやられてしまえば、漏洩のリスクが高まりますので、ある程度制限をかけておきたいというニーズはあると思います。
ただ、複写・複製について承諾を条件とするという条項は、実務の妨げになりますので、あまりオススメはできません。
必要最小限の複写・複製のみ認めることと、当該複写・複製品も秘密情報として同様に管理することの確認ができていれば十分と考えます。
例えば、次のような条項が考えられます。
この条項についても、絶対的に必要というわけではありませんが、特に、横のつながり(同業者・競合先)へサンプルを渡すといった特別な秘密保持契約においては、複製(リバースエンジニアリングなどを含む)を禁じたいというニーズも高いと思われますので、その場合は積極的に定めておくべき条項といえそうです。
なお、リバースエンジニアリングを禁ずる条項もよくみるので挙げておきます。
産業財産権の帰属についての定めは?
ここで想定している秘密保持契約は、
「自社の製品を客先の商品に適用する可能性を検討する」
という製品売り込みの場面ですので、そもそも開示された秘密情報を用いて発明等を行うことは、目的外使用にあたりますので、秘密保持契約においては禁じられる行為となります。
ただ、その検討の過程で「偶然に」発明等が得られてしまうことも(可能性は低いものの)ありえます。
そこで、偶然に発明が得られてしまった場合の対応として、通知義務と協議条項を置いておくことは、一応意味のある対応であると考えられます。
何かを約束するものではないことの確認は?
秘密保持契約の締結が即取引開始の確約となるとは、どの企業も考えないとは思われます。
ただ、自社の秘密情報を開示したのだから、その対価として(それと引き換えに)、是が非でも取引を開始してほしいと期待するのは自然なことのように思われます。
こうした期待をコントロールすべく、次のような確認条項を置く場合があります。
こうした条項があれば、相手方に当該秘密情報を出すべきか否か(出し損にならないか)という吟味が行われやすくなる効果が生じます。
そういう意味で、この条項は置いておく意味があると思われます。
なお、これと同じような趣旨で、他の業者と並行して(または後日)、同様の検討を行うことは何ら制限されない、という条項を置くこともあります。
多くの業者に同時並行で見積依頼を出し、同時に製品の評価を行っているといった場合には、こうした条項を入れることをオススメしています。
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