事実関係を整理する力がなぜ大事か?
営業から相談を受けて打ち合わせをした際に、営業から言われて一番うれしいと感じることは、
「おかげで大分アタマの中が整理できました!」
といった言葉をもらえることです。
法務が営業から相談を受ける案件は、通常の取引とは異なる例外的な対応が求められるものばかりです。
例えば、
・商流が複雑である
・受発注書だけで契約書がない
・契約書はあるものの曖昧である
・先方の要請が厳しすぎる
・先方との交渉が噛み合わない
といった案件ばかりといえます。
こうした案件の相談に対して、法務が支援できることは、
と
の2つであると思われます。
後者は当然としても、その前提となる事実関係が正しく整理できていなければ、その後の法務から提案も間違ったものにもなりかねない以上、前者の「事実関係の整理を支援する力」は、法務が絶対的に身につけなければならない力であるといえますし、また営業が法務に期待することでもあります。
営業も事実関係そのものは当然把握しているものの、自社が取引先に何を主張でき、またどんな義務を負うのか、という視点からの整理には慣れていない場合もあります。
この点、法務は事案を「権利と義務」という視点で見ることに慣れていますので、そうした視点をもって事案を整理して営業に示すことができれば、営業に対して大きな付加価値を提供することができることになります。
上で挙げた例で考えれば、
・複雑な商流を自社の権利・義務という視点から単純化する
・契約書に定める「曖昧な部分」と「はっきりした部分」の仕分けを行う
・先方との交渉が噛み合っていない部分を指摘しその要因を探る
といった形で、営業自身による問題解決に貢献していくことが法務の大きな役割であるといえます。
事実関係を整理する力を養うためには?
新人法務の頃は、相談を受けた内容をその場ですぐに理解することができず、何度も相談者に聞きながら、ようやくその商流と事実関係を理解できたという状況でした。
その状況から脱することができたのは、3年目に入った頃だったと思います。
この頃になって、自らの事実関係の把握力を少しづつ実感できるようになった理由は、おそらく、多くの相談を通じて自社の事業における商流のパターンが把握できたためであると考えられます。
この頃には、相談の途中であっても、概ね「ああ、あのパターンかな」という推測ができるようになりました。その推測したパターンとの比較をアタマの中でしながらヒアリングを続け、相談者からの説明が終了した段階で概ねその取引内容が把握できているという状態です。
以上の経験から考えると、事実関係を整理する力を発揮するためには、多くの相談を通じて得た「自社の取引パターン」をアタマの中で整理して把握しておくことが何より重要なのであろうと感じています。
自社の事業形態にもよりますが、それほど多くの取引パターンがあるわけではありません。私の経験では、概ね2年もあれば、自社の取引の基本的なパターンをアタマの中に網羅することが可能であると考えます。
まずは、自社の取引パターンを身につけることを意識しましょう。
自社の取引パターンを身につけてしまえば、あとはその応用に過ぎません。
自社の取引パターンを身につけ、事実関係の整理が即座にできるようになれば、営業からの信頼はどんどん増していきます。
より正確に事実関係を把握するためには?
営業から相談を受ける際には、必ず「商流を図でまとめていく」ようにしましょう。
ホワイトボードにまとめていくという方法もありますが、これは少しハードルが高いと感じますので、まずは自分で用意したメモ帳に商流と取引関係を書き込んでいくという方法でよいと思われます。
メモ帳に書いた図をラウンドテーブルの場で相談者と眺めながら、事案を整理し、論点を明らかにしていきます。
これにより、相談者としてもアタマの整理がしやすくなります。
私の場合、メモ帳はA4用紙の裏紙などを利用しています。これをクリップボードに挟んで、横にしてメモしていくようにしています(下記の記事もご参照ください)。
まとめ
事実関係を整理する力を身につけるためには、一言でいえば「相談経験を積むこと」ということになりますが、具体的には自社の基本的な取引パターンを網羅的に整理しておくことが何より重要であると考えます。
本項は以上のとおりです。
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